なぜ超低金利時代に新築を買ってはいけないか

プレジデント 3月10日(土)

今は住宅購入によい条件が揃っているといえるでしょう。なんといっても魅力的なのは歴史的な低金利です。住宅ローンは長期国債などの金利と連動しますが、現在は超低水準が続き、住宅ローンもその恩恵を受けています。
さらに国は住宅購入者に向けてさまざまな優遇措置を用意しています。「住宅ローン控除」でローン残高の1%分の所得税を10年間軽減してくれるほか、「印紙税」「登録免許税」「不動産取得税」「固定資産税」についても軽減措置があります。
また「フラット35」を販売する住宅金融支援機構には、国庫から数千億円の資金が入っています。不況時に不動産市況を活性化させるため、本来、住宅購入者が負うべき負担のかなりの部分を国が実質的に肩代わりしてくれているのです。

ただしこういった条件のみを見て、千載一遇のチャンスといえるかというと疑問です。そもそも住宅価格とは、次に挙げる二つの方向から決まります。一つは、土地や建物にかかったコストから決める供給側からのアプローチ。もう一つは、購買層が実際にどれくらいの金額を支払えるのかという需要側からのアプローチです。このうち低金利が有利に働くのは後者です。

たとえば頭金500万円で毎月10万円のローン返済能力のある人がいたとします。金利2%のときに期間35年のローンを組むと、約3000万円を借りることができます。これに自己資金を足して、物件価格3500万円のマンションが買えることになります。
 しかし、金利が4%に上昇すると、同じ支払い能力のある人でも2260万円までしかローンを組めなくなります。自己資金を足すと2760万円です。需要側の借り入れ可能額が減れば、実質的に需要も下がりますから、供給側は物件価格を適正な価格に下げざるをえません。

要するに今は諸条件が整い、金利が低いため、ローンは組みやすいのですが、それによって物件価格が高止まりするため、需要側としては高いところで買うことになるのです。
金利が上がれば物件価格は下がり、逆に低金利は物件価格を押し上げる要因になります。つまり歴史的低金利の今、家を買えば、フロー(毎月の支払い)面では得をしますが、ストック(物件価格)で考えると、高値でつかんで将来の値下がりリスクを抱えることになるのです。

ならば金利が上昇して物件価格が下がってから購入したほうがいいのか。現金で買うならそれも選択肢の一つです。ただ、多くの購入者は資金の大部分をローンに頼ります。そうなるとローン部分が大きいほど、金利上昇後の購入は、ストックで得してもフローで苦労してしまう(変動金利で購入した場合)。低金利の恩恵を受けてローンを組みつつ、資産価値の落ちづらい物件を選ぶのが現実的な方法でしょう。

では、どういった物件なら資産価値が落ちづらいのか。マンション価格は、新築から10~15年かけて急激に下がり、その後はなだらかに落ちていきます。そう考えると築10~15年程度の中古が狙い目かもしれません。耐震基準が変わった1981年6月以前に建築確認を取った建物は寿命が45~55年前後だといわれていますが、それ以降の設計基準で普通に工事を行い、修繕などのメンテナンスをきちんとやっていれば、100年前後はもつ物件も。

90年代半ばは、バブルが崩壊して大企業が放出した都心の優良立地にマンションが続々と建ちました。建物の寿命を左右する上下水道の配管の材質も、この時期から徐々に変わり始めました。こんな背景を踏まえても、10~15年落ちの中古マンションには、金利上昇によるマイナスの影響を受けにくい物件が比較的多いでしょう。

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