産経新聞 9月25日(日)
米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は新政策を試みます。長期の米国債を計4千億ドル(約30兆円)追加購入するのです。「日銀券ルール」(長期国債の日銀保有をお札の発行残高以内に抑える日銀の内規)を金科玉条とする日銀から見れば破天荒な政策でです。どちらが正しくどちらが間違っているのでしょうか?。
バーナンキ議長は1930年代の「大恐慌」や90年代初めの日本のバブル崩壊後のデフレを研究してきています。デフレ退治のためには、ヘリコプターからお札をばらまいてもよい、と言い放ったこともあるのです。
◆ドル資金、3倍に膨張
3年前のリーマン・ショック後、バーナンキ議長はお札を大量に刷りました。1度目は紙くずになりかけた住宅ローン担保証券を金融機関から買い上げて、不良資産化を食い止めました。次には米国債を買い上げ、オバマ政権による財政資金需要に対応しました。FRBは現在までにドル資金の創出規模をリーマン前の3倍にも膨れ上がらせているのです。
目的は金融市場の安定ばかりではありません。デフレ阻止です。不動産も株式相場も、所得も物価以上の速度で下がり続ける日本型デフレの泥沼にはまってしまうと、脱出もままならないからです。
お札垂れ流しの中で、米国の今年の消費者物価上昇率は3%台をつけています。でも、カネを刷って銀行に流し込む「量的緩和」だけでは景気はよくなりません。米国の個人消費は盛り上がりに欠けて、失業率も9%台のままです。日銀は2001年3月から5年間、量的緩和政策をとりましたが、デフレは止まらず、いまだに続いているのです。
次のステップは何でしょうか?バーナンキ議長はずっと考え込み、悩んできたに違いありません。今回打ち出した追加緩和策は、過去2度のような派手な緩和策ではありません。
FRBは12年6月末までに満期までの期間が6~30年の国債を4千億ドル分買い入れ、3年以下の国債と入れ替えます。この結果、12年末には保有米国債の平均残存償還期間は現行の6年超から8年超に伸びます。さらに、リーマン後に買い上げた政府系の住宅金融公社の債券や住宅ローン担保証券の満期償還資金をすべて再投資するのです。回復が遅れる住宅市場のてこ入れを狙っているのです。
現代の経済は、資産もモノも価格が上がることを前提に成り立っています。消費者は不動産価値が上がるなら借金して住宅を買う気になります。企業は借入資金の金利以上に製品の値段が上がっていると、返済の見込みが立つから、企業はビジネスを拡張します。適度なインフレ率を保ちながら、金利をインフレ率以下の低めに誘導すれば、投資が回復のです。中央銀行は短期金融市場、つまり銀行間の融通金利を操作するのがメーンなのですが、FRBは直接、長期金利を引き下げ、住宅や民間設備投資を促す政策に踏み出したということです。
◆長期国債買い上げ鍵
日銀のほうは民間金融機関による新成長分野への貸し出しを促進するための特別融資枠を設けたり、不動産投資信託、上場投資信託などいわゆるリスク資産を購入しています。お札を大量に刷る米国や欧州に比べて量的緩和規模は小さく、円高・デフレを止められません。株価も円高とともに下落しがちです。日銀は半端な量的緩和のために、新手法を生かしきれないでいます。
日銀は、本格的な量的緩和に踏み出せないように「日銀券ルール」で自縛しているのです。日銀による長期国債の買い切りや引き受けを拒むことが「宗教」だと言ってはばからない故速水優総裁が、01年3月の量的緩和政策時に導入のです。大規模な量的緩和のためには、巨額に上る長期国債の買い上げが欠かせません。そうなると、政治の圧力で日銀はずるずると国債を引き受けさせられ、悪性インフレを招いてしまうという恐怖症によるのです。日銀生え抜きの学究肌、白川方明総裁はこの日銀ルールの強力な継承者です。
FRBの長期国債保有は10年末にはドル発行残高を超えて、現在は1・6倍以上に上ります。日銀のほうは、小刻みに長期国債を買っては売る操作を繰り返し、日銀券発行残高の天井に突き当たらないようにしています。日銀のようなルールを世界の主要中央銀行は持っておらず、学術的根拠にも乏しいです。
対照的に、FRBはドル発行量に縛られず自在に量的緩和政策を駆使し、その成果を挙げるために買い上げる資産構成を変更し市場を通じた経済活性化に大胆に挑戦しています。
日銀が最優先すべき使命は超円高の是正と脱デフレです。それが、大震災からの復興の条件を創出するでしょう。その妨げになる内規はさっさと再考、廃棄すべきではないかという考えは、間違っているでしょうか?
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