東京の時間貸し駐車場ビジネス

アゴラ 6月20日(水)

北米では角地にスターバックスがありますが、東京では角地に時間貸し駐車場あり、というのが外から見た日本の姿です。

東京には街中にやたらと空き地が存在し、その空き地が時間貸し駐車場へと変貌しています。ビジネス街や繁華街に近いところならいざ知らず、いわゆる住宅地の中にかなり点在しています。というより、住宅地であるが故に時間貸し駐車場なのかもしれません。

高齢化と共に住宅も高齢化が進みます。半ば空家のような家も増え、相続問題を抱える物件も多くなってきています(相続税の問題というより相続する子供たちの間で不動産の扱いについてもめてしまい、処分できない問題です)。

更に東京の住宅地では建築しても3階建て、それも斜線制限が入れば3階部分はかなり制約される可能性があるため、いわゆる不動産デベロッパーがビジネスとして開発するにはせいぜい建売住宅ぐらいにしかなりません。一方、建売にしても土地付で4000~5000万円前後するためある程度の企業に安定して勤務している人でないとなかなかローンを組む感じにはなりません。おまけに大体そういうサラリーマンは駅近くの高層マンションを求める傾向が強く、住宅街の戸建ての需要は案外絞り込まれるのです。

一方、空家にしておくと防犯防災上、あまり好ましくなく、結局壊して更地にした上で小遣い稼ぎになる時間貸し駐車場経営ということになるのでしょう。ところがこの時間貸し駐車場、私が東京に行くたびに増えていきます。例えば業界最大手のパーク24では昨年11月から今年5月までの半年の間だけで駐車場台数で3.2%増の15000台増やしています。

では住宅地の駐車場の利用者は誰なのでしょうか? ひとつは駐車場を持たない人たちの月極め。工事業者などの日中の利用などが主力ですが、どうしても埋まらないのが夜間。これも気をつけて見ていないと案外見落とすのですが、このところ、夜間料金の値下げ戦争が進んでいます。夜間料金は大体、夜10時から朝7時ぐらいまでの最大料金ですが、私の実家のある山手線から歩ける距離のところで1年ぐらい前は1500円から上でしたが今では最安値500円でせいぜい1000円程度が実勢になりつつあります。

上述のパーク24の占有率は44~45%程度です。日中の占有率が高いとすれば夜間はどうしても空の状態になりやすいということです。しかも時間貸し駐車場は住宅地のあちらこちらに点在するため、地元の人にしかわからないような場所の駐車場は価格的に下げがちです。結果として地域全体の値崩れを起こしやすいということになります。

もともとこの駐車場ビジネスは路上駐車の取締りが非常にきびしくなったことを受けた駐車スペースの供給という意味から成長を遂げてきました。しかし、感覚からすれば繁華街を別にすればそろそろ頭打ちのような気がします。空き地は今後もどんどん増え、住宅街に住む人口層は高齢化が進み、自動車の所有率は下ります。今や、マンションの駐車場も空きありの看板が目立つ状況になってきています。車離れがおきている証しのひとつでしょう。

実際駐車場運営会社はレンタカー事業などに派生させて稼働率を上げ、収益構造を改善していく状況になっています。私が仮に事業をするなら、可能であれば、簡易屋根つきにしたり、洗車スペースを作るなどクオリティ向上を図りながら価格の下落に歯止めをかけ、価格競争に巻き込まれる前に対策を打つべきかと思います。この状況ではあと数年もすれば業界の利益率は悪化の一途となり淘汰すら始まる可能性があるかと思います。

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東京は生活費世界一

アゴラ 6月16日(土)

2012年度のマーサーの駐在員生活ランキングランキングが発表され、東京が首位奪取となりました。昨年の1位だったアンゴラのルアンダ2位に転落となり、第3位には大阪が6位から赤丸急上昇となっています。

マーサーは著名なコンサルティング会社で同社が世界214都市の駐在員の生活費を米ドル建てで比較したものです。東京や大阪がランクを上げたのは円高ドル安が効いていると思います。ちなみに2ベッドルームの賃料は東京が4800ドル(約385000円)/月であるのに対して香港では約7100ドル、ルアンダは6500ドルとなっています。つまり、不動産(家賃)だけを見れば東京はさほど高くないわけですが、例えばジーンズが150ドル(12000円)という評価が一般的な数字かどうかはなんとも言えません。

米ドル建ての比較である結果、数字に偏りが出てしまっているというのが正直なところです。米ドルの本家本元ニューヨークは33位で、昨年比ひとつランクダウンです。大きく動いている例では、オーストラリアの主要都市が軒並み10前後のランクアップとなっているのに対してヨーロッパの主要都市は大きくランクを下げています。

日本に来て物価が高いと感じるかと言われれば、そういうところに行けばお金がかかる、という表現が一番確かで、使わないですごしたければかなり節約モードが可能です。事実、普通の勤め人は500円とかせいぜい1000円のランチで会社帰りのチョイ飲みも数千円で収まっている場合がほとんどだと思います。むしろ独身女性の方が消費リーダー的な感じがします。

バンクーバーのように消費意欲を全く掻き立たせないところから東京に来ると、東京は消費天国そのものであり、行くところ、入る店、すべての商品がそれなりに唸らせるものばかりです。そういう意味では「世界で一番お金を使いたくなる都市ランキング」であれば東京を絶対的自信をもって推奨します。

ジーンズが150ドルだと評価される理由のひとつは、外国人への情報が充分に伝わっていないこと、そして駐在員の生活範囲が極めて狭いところに凝縮されているからではないでしょうか? 山手線の内側の特に外資系が集まるようなエリアでは、普通の日本人が「たまの贅沢」を楽しみにいくぐらいの感覚のところですが、駐在員はそういうところで普通に生活するわけです。もしも駐在員の生活範囲が新宿や池袋などもっと庶民的なエリアまで拡大すれば、評価対象の物価は下ると思いますし、東京の生活イメージも大きく変貌するでしょう。どちらかというと、外国人向け高級住宅が一定エリアに集中していることで日本人の本当の生活観とかけ離れたものになっているのだろうと思います。

こういう形で世界の人たちに「物価が高い東京」と思われるのは、外国人観光客を増やそうとする日本政府の方針には、大きな逆風となりますね。

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