アゴラ 9月22日(土)
20年も低迷した日本の不動産市場に薄日が差すかもしれません。7月1日時点の基準地価が発表されましたが大都市圏では1.0%の下落に留まり反転の兆しが見えてきた感じもします。
バブル崩壊のパワーの大きさは、経済学者でさえも想定を越えたものだったと思います。その間、少子化やライフスタイルの変化、更には超高層マンションの普及で土地用途や有効活用が進んだこともあり、土地の価値は下落を続けました。更には日本独特の問題、例えば減価償却期間と建物の残存価値がもたらす中古戸建て住宅への住宅ローンがつきにくさなどもありました。
ここカナダでは建物の価値が下がらない、あるいは年によっては評価額が前年より上がったりするのですが、日本は資産を長期的に維持し、その価値を高めるという思想より古いものは作り変えるというスクラップアンドビルドの発想が強いところも特徴であり、不動産の価値、特に建物の部分の減価は自動車の減価と同じ様な曲線を描きつつあります。
ここに来て二つの変化の兆しがあります。
一つは世界のマネーがその運用先の欠如、特に不動産に関しては安定的に一定の利回りを期待できる世界主要都市が少なくなってきており、日本がその対象となる可能性が高まっていることです。
二つ目は中小企業への融資に関するモラトリアム法案が来年3月に切れることを受け、中小企業で資金繰りに窮しているところを中心に相当の処分不動産が出るのではないかとみられていることです。
まず、世界のマネーですが、主要国の超低金利政策の下、機関投資家を初め資金運用者はその運用先に頭を痛めております。日本の不動産の場合、賃貸利回りで5、6%は取れる物件も多く、コストを引いても国債などの1%以下の利回りを追うよりうまみがあると見られています。また、過去20年も不動産価値は下げて続けており、不動産の絶対的価値の下限に来ているともみられています。絶対的価値とは一般的な賃料が常識水準を崩さない前提で一定の利回りを期待できるという意味です。
更に日経電子版にもあるように台湾を含めた逃避マネーの日本への流入もあるでしょう。この記事はユニークだと思います。台湾が中国に併合されるリスクを改めて認識し、資産のディバーシフィケーション(分散化)を図るというのです。これは政治的な関係によって強くなったり、弱くなったりするのですが、今、そういう流れが出始めたというのが本当だとすれば注目に値すると思います。
もう一つのモラトリアム法案ですが、一説には大手銀行を含め、このモラトリアムは相当無理をしているとされています。つまり、隠れ不良債権がたまりつつあるのではないか、というわけです。この「亀井静香法案」が可決されたとき、経済的には問題の先送りとされ、これを悪用した例もあるのではないかとされていました。事実、この法案で一息ついたところもありますが、これに甘えた会社も相当多数に上っているはずなのです。結果として法案が失効した際に優良不動産が処分売りに出されるといった見方は根強いのです。
よって、需給が活発になり不動産の買い場が訪れたとみることは可能です。但し、長期的に上昇トレンドを描くといった意味合いではなく、一時的な回復という程度でいわゆる投機対象にはならないということは明言できると思います。