米国リートの回復基調は継続へ

サーチナ 10月29日(土)

フィデリティ投信が設定・運用している「フィデリティ・USリート・ファンド」の運用を担当している米フィデリティ・インベストメンツ(本社:ボストン)のポートフォリオ・マネージャーのスティーブ・ビューラー(Steve Buller)氏が来日し、10月27日と28日に東京および大阪で最終投資家向けに米国リート市場の現状と展望についての講演を行ないました。その一環で、10月26日には報道関係者を対象にした説明会を開催し、リートが投資する商業用不動産の直近の状況を詳説しました。ビューラー氏は、「米国リート市場には追い風と向かい風があるが、どちらかといえば追い風の影響を強く受け、他の資産クラスと比べて、長期間において相対的に高いパフォーマンスを上げていくと考えられる」と語りました。

ビューラー氏は、「フィデリティ・USリート・ファンド」の設定当初(2003年12月)から運用を担当し、さらに以前の1998年10月から米国で最も歴史のある不動産関連投資ファンドである「Fidelity Real Estate Investment Portfolio」の運用も担当しています。なお、「フィデリティ・USリート・ファンド」は、純資産総額が運用上の限度額に近づいたため、2011年2月に募集を一時的に停止しました。その後、米国リート市場の下落、また、ドル安などによって新規に投資資金を受け入れる余裕が出てきたため、2011年9月12日から買い付け申し込みの受付を再開しています。ビューラー氏の解説の要旨は以下のとおりです。

米国の上場リートは2011年7月現在で134銘柄で、時価総額は4600億ドル(約35.5兆円)にのぼります。2008年には時価総額が2000億ドルを割り込むほどに厳しい状況を迎えましたが、その後、順調に回復し、すでにサブプライムローン問題以前のピークを超えて時価総額が積み上がってきています。また、米国の不動産市場で、大変厳しい状況にある戸建住宅にはリートは投資をしていません。この点で、リートは米国の戸建住宅の価格変動から直接的な影響を受けることはありません。

米国リートの2つのエンジンが成長を押し上げています。まず、「内部成長」については、物件の稼働率、家賃ともに回復基調にあります。また、物件の新規供給が不足しているため、既存物件の収益性にポジティブな影響があります。米国商業用不動産のNOI(営業キャッシュフロー)は、2010年7-9月期よりプラスに転じ、2011年4-6月期には年率4%程度に回復しています。この回復基調は継続すると考えています。

特に、米国商業用不動産の新規物件の供給が歴史的な低水準にあることに注目しています。着工物件面積は、2000年-2006年当時の3分の1の水準に落ち込み、総在庫比率は0.5%になっています。1984年4月から2011年8月までの平均総在庫比率は1.8%だったので、在庫の水準も歴史的に低く、人口の伸びが1%、GDPの成長率が1-1.5%という米国の需要に対して不足しています。

このような環境にあることから、現在は回復基調にある米国リートの「1株当たりFFO(Funds From Operation)」(株式のEPSに相当)の成長率は、2010年の5.7%から、2011年は7.0%に高まると予測されます。2012年には10%を超えることもありえると考えています。

一方、株式・社債発行や規模の経済などによる成長を示す「外部成長」の分野でも、世界的な金融危機以降、リート社債の平均クーポンと米国国債利回りとのスプレッドは縮小し、長期社債の調達コストが低下しています。この有利な環境を活用して、リート各社は追加の物件取得を積極的に展開しており、この物件取得が今後のリートの収益水準を引き上げる効果が期待できます。

さらに、リートのバリュエーションを考えると、直近のリート価格の下落によって、リート対象不動産時価に対してリート価格は割安になっています。米国10年債利回り、および、米国株式の配当利回りに対しても米国リートの配当利回りスプレッドはプラスの水準にあります。このような点を総合的に判断すると、現在のリートの水準については、過去1年半くらいの間で、もっとも強気に考えて良いと思っています。

反面、米国リートの向かい風といえるのは、ボラティリティの大きさです。金融危機以来、徐々に落ち着いてきていたものの、欧州ユーロの問題などの影響を受けて、足元で上昇しつつあります。

このように、高いボラティリティという向かい風はあるものの、商業用不動産の環境、低い調達コスト、高い配当利回りやバリュエーションなど、いくつもの追い風が吹いているというのが現状の評価です。現在、リートが進めている新規物件の収益が顕在化するのは2012年以降になることから、来期以降においても、リートの収益見通しは強気に考えてよいと考えます。

年に2回ほど来日していますが、不景気といわれる日本で、常に新しい商業ビルが建設され続けていることには驚いています。米国では、現在、供給が不足しているように、収益機会が小さいときには、不動産開発がストップするくらいに市場の調整力が働いています。日本の不動産市況の低迷が長引いていることと、米国の商業用不動産を同じように考えることはできません。また、米国は依然として人口が増加していることも、日本の不動産事情とは異なるポイントです。

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