小幡 績さん、「国有不動産の原理主義はもうやめよう」

アゴラ 10月6日(木)

以下、小幡 績さんによる記事です。

原理主義というのは基本的に間違いだ。原理を優先させるから、当然、事実と離れていくから、真実からも遠くなる。

とりわけ、経済現象や経済政策については、原理主義は誤った帰結をもたらすことが多くなる。なぜなら、経済は生き物であるから、状況によって、起きてくる現象は変わってくるし、採るべき政策も変わってくる。

その典型的な例が市場原理主義だ。市場は有効なこともあれば、害悪となることもある。それはその市場をデザインしたデザイナーの能力にもよるし、プレイヤーの質にもよるし、状況変化で適切に機能しなくなることもある。

ケインズも、過去の自説を主張し続けるほど愚かではないというスタンスをとったように、経済状況により、経済政策は変わるべきものなのだ。彼は、経済政策は、大著に書くべきではなく、パンフレットとして書くべきだ、と言ったのはそういう文脈でとらえることもできる。

さて、そんな大げさな議論をすることもないのだが、私はこの記事に反対する。国は国有不動産を保有することにより有効活用すべきだ。国有不動産は、そのうち良質なものは売るべきではない。現在、投資対象として良質な日本の不動産ほど魅力的なものはないからだ。

それは妥当な値付け、今後まとまった規模の土地が手に入りにくい、などの理由もあるが、最大の理由は、市場のひずみだ。

とりわけ良質な賃貸住宅は全国的に依然不足しており、一定規模のニーズはあることから、需要と供給の関係で、賃料はそれほど下がっていないし、良質なものは、今後相対的には上がっていくことが考えられる。

したがって、優良不動産を保有している投資家は絶対にそのような物件を手放すことはない。

公務員住宅関連の不動産はまさにそれに該当する。

いったん売却すれば、もちろんそれなりの収入になるだろう。前述の理由から買い手はうなるほどいるからだ。一方、売却後、もし、同等の住居を公務員にあてがうとすれば、かなりのコストがかかるだろう。減価償却などを除いて考えれば、良質で一定以上の規模のある賃貸住宅の不動産利回りは、5%を軽く超える。個人でマンション投資をしても割が合う可能性があるのは、それだけ利回りが出る、ということが背景にある。個人の区分所有の投資でもそうなのだから、大規模となればなおさらだ。だから、売らずに賃料を受け取った方が長期で見れば儲かるのである。

したがって、政府は優良不動産を絶対に売るべきではない。不動産デベロッパーを儲けさせるだけのことで、国民負担が増えることになるだけだ。

そもそも公務員住宅がいらない、と言うのであれば、それは、今の公務員住宅を民間向け住宅に転用して稼ぐことが望ましいというだけのことで、不動産を売れ、と言うことにはならない。

政府は活用が下手だ、と言うことであれば、政府に運営させるのではなく、新しく国有不動産管理会社を作ればよい。不動産管理運用会社を作ることが、長期的な国民負担を最も減らすことになる。

もちろん、日本経済のために売ってもよい。不動産会社が大儲けするのも、国民一人一人が少しずつ利益を得るのもGDPにとっては同じだから、それでいい、と言う考え方もある。

しかし、私は、民間不動産会社が大きな利益を上げ、その分、国民が税負担を増やすのはおかしく、公務員を住まわせようが、追い出そうが、その意思決定に関わりなく、不動産会社の大きな利益の代わりに、国民一人一人の増税額を緩和するために国有不動産を活用することが望ましいと考える。

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