網野式・動詞フォーカスフランス語入門【ネイティブ音声付き・メールサポート付き】〜本物のフランス語を身につけたい方へ〜

網野式・動詞フォーカスフランス語学習法


動詞フォーカスで本物のフランス語を身につけましょう




こんにちは。 網野智世子です。

本書をお読み頂きありがとうございます。
本書では、次の3つのテーマを中心に執筆させていただきました。
そのテーマとは、私自身が30 歳を過ぎてから多言語を身につけよう と努力する中で得た
「語学習得の秘訣」および
それに基づく語学習得法である、
「動詞フォーカスメソッド」 そして動詞フォーカスメソッドに基づく、 「効率的なフランス語学習法」
以上の3つが本書のテーマです。

あなたがもし、これまでにフランス語や英語等の外国語を 勉強していながら伸び悩んでいたり、 何らかの「壁」を感じていらっしゃるとしましたら、 本書はそれを打破するきっかけとなるはずです。

私は現在、多言語で翻訳や語学教材執筆、語学指導などの仕事を行 っています。
行政書士資格を持っていることもあり、 当初は法律関係の書類の翻訳からはじまりました。
現在では多くのお取引先会社より幅広い分野の翻訳業務をお受けし ています。

現在、プロ翻訳の業務を行っている外国語は10ヶ国語です。
そして現在、動詞フォーカスメソッドの可能性を探る目的もかねて 約40ヶ国語ほどの外国語を並行して学習・研究しています。
その一方で、個人的な話に移りますと 肢体不自由児の小学4年生の長女を筆頭に小学2年生の次女、 保育園の年長の長男、同じく年少の三女の、 合わせて4人の子供の世話に追われる毎日です。
毎日家中誰か飛び回り、大変な状況です(笑)。


また、昨年の春から文武両道を目指して(!?) 地域のママさんバレーチームに入りました。
(中学・高校では一応バレー部に入っていました) ちなみに左利きで、サーブやアタックも左打ちです。

見た目は決してバイタリティに溢れているというわけではなく、 子育てに苦労する不器用な母親ですが、 「多言語習得を目指せることや、 それを活かせる仕事ができること」 に大変感謝しています。

多言語にかかわっている・・・といっても、 実は留学経験もなく、海外滞在経験は旅行程度しかありません。
しかも、旅行で行ったことがある国もほぼ全て英語圏のみです。
そのため、かつては

「外国に住んだり留学したりしなければ、外国語は身につかないだ ろう・・・」

と思い込んでいました。
大学在学中に司法試験受験などを思い立ったこともあり、 外国語の勉強などは「贅沢」の部類でした。
フランス語についても、大学1・2年の第2外国語で少し学習し、 その後何度か思い立って挑戦したのですが そのたびに挫折していました。
周囲にいた「フランス語が話せる人」はみなフランス語圏の帰国子 女か留学経験者ばかりだったので(今から思えば、学生の段階や社 会人数年くらいでは、同年代に「大人になってからフランス語を身 につけた人」がいないのも当然だったのですが・・・) そういう人でなければ身につかないだろうという勝手な「閉塞感」 を持ったりもしていました。

しかしその後、30 歳になった頃に、必要に迫られる形で英語が身に つきました。
そして同じく30 歳のとき、行政書士の試験勉強中に実務家講演会で 「行政書士業務では、スペイン語とポルトガル語が使える」と聞い たことがきっかけで、その2 言語の勉強を始めました。
「国内でも仕事で使える!」という明確な動機づけがあったことや、 英語力アップによって英語からのアクセスが可能になっていたこと もあって、スペイン語とポルトガル語は始めて7,8 か月くらいで日 記が書ける程度の力がついていました。

それでもフランス語はその時点では「頭の容量が足らない」(この感覚ははっきり覚えています)感じだったのですが、2002年6月の日韓W杯の開幕戦(セネガル-フランス戦)がきっかけで私は「自称フランス語もできる人」に変わりました(笑)。
そのとき、旧仏領の西アフリカの小国セネガルが、「宗主国」で98 年大会優勝国のフランスに勝ってしまったのを見て、なぜか「フラ ンス語をやろう!」という意欲がわきあがったのでした。

試合の後、その頃英語で書いていた「行政書士業務紹介レジュメ」(自 分の営業用)を勢いでフランス語で書いてみたら・・・
「なんだ、書けるじゃないか。」

その後、発達の遅い長女の子育てや度重なる(^^;)出産・赤ん坊の 世話などで四苦八苦しながら、2004 年以降のブログの多言語日記→ ブログつながりの士業者からの多言語翻訳受注などを経て、仕事で 使うことができる外国語は10 ヶ国語くらいになりました。


そんな中、2005 年に出会った会社からの依頼で英語勉強法教材を作 成する機会に恵まれました。教材を作り、その後のユーザーサポー トで質問に答えたりする中で「動詞をキーワードにした語学習得の 秘訣」が明確にまとまってきました。
すなわち、私からみて、外国語を習得する秘訣は
1.その言語の動詞に強くなる(語彙を身につける)こと
2.「動詞を軸にして」その言語の文法・表現を学ぶこと
そして、
3.その戦略のもとにその言語の話者と積極的にコミュニケーション をとること
この3点に集約することができます。

・・・言語における「動詞の大切さ」を悟った一番のきっかけは、 上でも触れたブログの多言語日記でした。
多言語で日記を書こうとするといろいろな言語の辞書を引きまくる ことになります。
この作業の中で、「特に頻繁に辞書を引く単語がある・・・」ことに 気づきました。
それは、「いつ」という時間に関係する副詞(あるいは副詞句・副詞 節)の表現と、
「なにをする・した」つまり動詞の語彙や活用形についてでした。

英語は動詞の活用パターンが少ないですし、中国語やインドネシア 語のように動詞が活用変化しない言語もある一方で、フランス語・ スペイン語などのラテン系ヨーロッパ言語などは動詞の活用を覚え ることが大仕事になります。

辞書を頻繁に引くということはそれだけそのことを書く頻度が高い ということです。
そこで、なぜ、時間関係の言葉と動詞が特に多いんだろう?・・・
そしてそもそも、動詞の「動」ってどういうことだろう?と考える うちに、こんな考えが浮かびました。


動詞はそれ自体が「時間概念」を持っていることと、私たち人間が みな「時間」の中で言葉を使って生きているからではないか。
・・・動詞が時間概念を持っている、と聞くとあなたは「現在形と か過去形とかの時制があるから?」と思うかもしれません。
確かにそれもここでいう「時間概念」にあたります。他方、上に述 べたように言語によっては時制を持たないものもあります。

時制の有無だけでは他の品詞と区別できない、とすれば・・。
それでも、何語であるとにかかわらず「動詞」には共通するものが あるのではないか、ということで広辞苑(当時の第六版)で「動詞」 を引いてみると、次のような説明がありました:

「動詞:事物の動作・作用・状態・存在などを時間的に持続し、ま た時間的に変化していくものとしてとらえて表現する語。(以下略)」

これを英語に訳すと次のようになります:

“A word by which we express motion, action, status or existence of things as lasting/continuing or changing/transforming itself following TIME…”

つまり、「動詞」の「動」は「時間とともに」ものごとのありようが 持続する、あるいは変化する、ということなんですね。
いってみれば、動詞は四次元的な言葉といえるかもしれません。

動詞の持つこの特徴は、他の品詞にはないものです。
たとえば日本語の品詞の中で、助詞や接続詞などの付属語は置いて おいて、名詞や形容詞、副詞などの自立語を動詞と比較してみると、 それぞれの言葉の持つ内容は時間的には「止まっている」、いいかえ れば三次元的世界の言葉であることがわかります。
このことは、あなたが目で見ているものを言葉で表そうとしてみる と実感しやすいと思います。


例えば、道を歩いていて赤信号で立ち止まったとします。
単純に「信号」について表してみましょう。
「赤信号」とか、「信号は赤だ。」などと名詞だけあるいは名詞と形 容詞系統(「赤だ。」は形容詞プラス助動詞だと思います)で表すと、 イメージ的に「静止している」感じですよね。
あるいは、ある一時点の画像を切り取ったような感じかもしれませ ん。

他方、「信号が赤になった。」と表すと、「なる」という動詞を使うこ とで、イメージ的に「時間の幅がある」あるいは「動画的」な感じ がしませんか?
これは、直訳的に表してみるともっとはっきりします。

「赤信号」ならred signal(フランス語でいえば(le) feu rouge),
「信号は赤だ」ならThe signal is red (now).(Le feu est rouge. )
そして「信号が赤になった。」だと
The signal turned red. (Le feu passe au rouge.)になります。

名詞・形容詞は「静止画的」、動詞は「動画的」・・・

このアイディアに共感して頂けたとしましたら、これからのフラン ス語、そしてすべての言語の語学学習を進めるためにそれを心に留 めておいて下さい。
そして、私たち人間はすべて、時間の流れの中で生きているという ことも・・。
このことは自然科学的にも否定できない真実です。そして 人間は「言葉」をコミュニケーションの道具としているため、意識 的にも無意識的にも、時間概念を言葉に反映させている と言えます。


ここで、「時間概念を言葉に反映させる」と聞くと、午前6 時30 分 といったような具体的な「時刻」とか、2011 年7 月何日といったよ うな年月日、あるいは「早朝」「夜遅く」といった時間帯を表す名詞 あるいは副詞をイメージされるかもしれません。
しかし、このような言葉は時間に関係することがらを「表して」は いますが、その言葉自体が時間の流れを持って(硬い言葉でいえば 「内包して」・・なお、英語ならinvolve、フランス語ならcomprendre という適切な動詞で表せます・・・)いるわけではありません。
これに対して、午前6 時30 分に「起きる」とか、夜遅く「帰宅した」 といったような動詞は、それぞれが、 どんなに短いものであっても時間の流れを持っています。
(「起きる」「帰宅する」は能動的な動作なのでわかりやすいですが、 「停滞する」といった動作性の乏しい動詞であっても「時間の流れ」 を持つことに変わりはありません。)

このように、動詞はそれ自体が時間概念を持っている故に人間の言 葉の中で重要な地位を占めている・・・というのが私の仮説です。
ひとことでいえば、人間はすべて時間の流れの中で言葉を持って生 きていること、そして動詞は唯一「時間を持った」言葉だからです。


■「動詞に強くなる」とは?

それでは次に、
「動詞に強くなる」とはどういうことかを考えて見ましょう。

まずそれは、動詞の語彙力(ごいりょく)を強化することを指しま す。
「語彙力」には、単に「attendre = 待つ」などと日本語訳を覚え ることだけでなく、それぞれの 動詞の語義(複数の場合は出来る限りすべての語義)と、語義ごと の語法をしっかり身につけること を含みます。

フランス語の動詞でいえばまず「自動詞か、直接他動詞か間接他動 詞か・・・」という区別が重要です(これが区別できていないと、 文法がわかるわからないのレベルではなく、「フランス語が話せる」 ようにはならないといっても過言ではありません。)
また、英語同様フランス語動詞でも「何を主語にとるか(人をとる ことができるか、物・物事をとるか、両方OK か、また主語となる 言葉は限定されているか等)が大切です。
さらにフランス語の場合は、関係代名詞que(英語でいうthat)に続く 「従属節」の中の動詞が「直説法をとるか、条件法や接続法をとる か」という問題もあります。
(フランス語初心者の方がこれを読むと顔が曇るかもしれませんが、 「従属節の[法]の選択」は、わかりやすい理屈に基づいているので決 して難しくありません。
また、フランス語でこの問題をクリアできれば、イタリア語・スペ イン語などの他のラテン系言語、さらにドイツ語など「接続法」を とる他の言語にも応用できます。)
・・・とはいえ、これを読んだだけですと「それだけ?」と思われ るかもしれません。

「語義や語法をマスターするというなら名詞だって形容詞だって副 詞だって同じ、というか動詞だけに限ったことじゃないじゃない か・・・」と。


しかし、私たち日本語ネイティブは、いろいろな意味で「動詞」を 特別視する必要があると私は考えます。
それは、
私たちは母語とする日本語の特徴ゆえに、 「動詞」に特に弱いからです。
そして、
日本語は、世界の(文字を持った)言語の中でも最も動詞の地位が 低い言語だから
と言えます。
それゆえ、私たち日本語ネイティブは端的にいえば「動詞に弱い」 ため、これがともすれば英語をはじめフランス語、そしてそれ以外 の言語を学ぶ上でハンディキャップとなります。


私たちが日本語を母語としていることでどういう影響を受けるのか、 それをよく理解していないと
「フランス語を勉強しているのにいつまでも上達しない」
「XX語は何年もやっているけどいまいちうまくいかない」
という悩みを抱え、そしてその原因も分からずに、得られるはずの 有形無形の財産を得ることなく人生を終えてしまう・・・というこ とになりかねません。

ではなぜ、日本語は動詞の地位が低いのか・・・
ここで「動詞の地位が低い」とは具体的にどう言うことか私の考え を申し上げます。

それは、おおまかに 「動詞の語彙が少ない」こと、
「文を作る上で一般動詞を使う頻度が相対的に低い」こと
であるといえます。
次に、なぜ日本語はそのように動詞の語彙が少なく、文を作る上で 一般動詞を使う頻度が低いのでしょうか。
考えられる理由の1つ目は、その「文構造の特徴」です。
よく「英語は動詞が主語の次にくるけど、日本語は動詞が文の最後 に来る」といいますよね。これは「英語」を「フランス語」にいい かえても同様です。
これは、どの言語にもある「(文の)主部」と「述部」のうち、動詞 が属する「述部」が最初の方に来るか後の方に来るかの違いです。(文 型にたとえて「SVO 言語か、SOV 言語か」という言い方もできます。) 日本語は後者に属しますが、このような特徴を持つ言語は韓国語ほ か、いわゆる「ウラル・アルタイ語系」の言語(フィンランド語、 ハンガリー語、トルコ語など)やモンゴル語/モンゴル系諸語、ペル シャ語等イラン系言語、インド系言語(ヒンディー、ネパール語・・) など相応に存在します。


ただし、述部が最後にあってもそれだけでは動詞の語彙が少なくな ることや動詞を使う頻度が低くなることを説明できないと思います。
私の考えでは、日本語では述語の中で主な機能を果たす言葉、文法 用語で(活用する語、という意味で)「用言」と呼ばれる言葉・・・ として動詞以外に形容詞があり、この形容詞が動詞と似たような活 用パターンをもち、しばしば動詞にとってかわることが日本語の中 で動詞を弱める原因の一つであるとみています。

「活用」といいましたが、あなたが中学の国語で習った現代国語文 法か、高校の古文で習った古典文法を思い出してみてください。
「未然形、連用形、終止形、連体形、仮定形(古文では已然形)、命 令形」というパターンです(忘れているかもしれませんが・・・)。 動詞と形容詞(+形容詞の一種ともいわれる形容動詞)はともにこ の6パターンに従って活用しています。

試しに、書くとか読むとか寒いとか美しいとか、適当な動詞や形容 詞を思い浮かべてみてください。

※「書く」という動詞を例にとると 「書か(ない)」「書き(ます)」「書く」「書く(こと)」「書け(ば)」 「書け」のように活用します。これは日本語ネイティブの私たちは、 普段何も考えずに活用しています。
「美しい」という形容詞も、動詞と同じようなパターンで活用され ます。


・・・このことから、次のようなことが導かれます: 1. 日本語の動詞は(中国語などと違って)活用変化はするが、 それは英語のように時制を軸としたものではなく、その表す内 容や後にくる言葉の品詞の性質に従った変化パターンをとる。 そしてそのパターンは形容詞と同様である。

2. 他方で、「寒かった」「寒ければ」など、形容詞の活用形1 語で(厳密には助動詞を伴うが、語数としては1つの語で)意 味的に過去・未来などの時制概念を表すことができる。これは 英語ではwas cold のwas のようなbe 動詞、その他の言語で は主として「状態動詞」とよばれる動詞の一種を付加して2 以 上の語数で表すことと明確に異なっている。

・・・これだけでも、
日本語では述語として「形容詞」が強い力をもつ ことがおわかり頂けると思います。
さらに、これはもっと推測になりますが、日本人の私たちは「速く 歩く」などと動詞主体で表すよりも、「歩くのが速い」などと形容詞 主体で表すほうを好むように思われます。

理由の2つ目は、日本語では名詞特に漢字語の名詞が非常に多く使 われていて、これが文法的には名詞でありながら事実上動詞、ある いは英語でいう動名詞、フランス語でいえば動詞の不定形/原形の名 詞用法(〜すること)のような働きをするためと考えられます。
つまりそれらの漢字語名詞が動詞にとってかわるか、意味の弱い(あ る・なる等)動詞しか使わずにすむためです。
たとえば、「管理」といった漢字2語から成る名詞は、日本語では文 法的には名詞です。


ちなみに、これらに「する」をつければ「管理する」というサ変「動 詞」になりますよね。
しかし、私たちはたとえば「十分管理されている」という動詞表現 よりも「管理が行き届いている」といった名詞表現のほうを好んで 使っているように思います。
これはまず、「管理」という名詞じたいに実質的に「管理する」とい う行為の意味、動詞の意味が入っているため、「管理する」という動 詞を使わなくても「管理」と言えば動詞を使うのと同じような効果 があるためといえます。
加えて(さらに私の推測が加わりますが)日本人の感覚だと「管理 されている」という動詞表現は強く聞こえ、「管理が行き届いている」 といった名詞表現のほうがマイルドで使いやすいからというのもあ るかもしれません。


「管理」などの漢字語名詞は御存じのように中国から入ったと考え られています。
しかし当の中国語(ここでは普通話を指します)では管理gu?nl? と いう言葉は名詞であると同時に動詞としても使われています(例: 管理??gu?nl? caiwu 財務を管理する)
少し話がそれますが、このように中国語では名詞と同じ語が動詞と しても使われる場合が多く、それが文法上は名詞としてのみ扱われ る日本語に比べて動詞の語彙はずっと多いといえます。

上の例でいえば「管理が行き届いている」は通常、英語では be well managed, be well looked after
仏語では
etre bien entretenu[エートル・ビヤン・アントゥフトゥニュ)
などの動詞表現が使われます。
以上のような2点の理由から、日本人が一般的に「動詞に弱く」な っているとのだと思います。


またそれによって、私たちはともすれば日本語パターンに引きずら れた「A(名詞)はB(形容詞)」を英語に持ち込んで、
「なんとかイズなんとか」という言い方をしたり、(フランス語でも 「なんとかエ(est)なんとか」といったり) 英語やフランス語でなら動詞1語で表せることを make, do, give(仏:faire, donner)などの手頃な多義語+名詞で言っ てしまったりする傾向があるのではないでしょうか。
SVO 言語(VSO 言語含む)では動詞の地位が一般に高いので語彙も 多いといえます。


■「動詞を軸にして学ぶ」とは?

それでは次に、「動詞を軸にして学ぶ」とはどういうことか?
ということについて考えてみましょう。

センテンス(文)で軸になるのは動詞ですから、ある言葉がどの品 詞にあたるか、あるいは文の中でどのような役割を果たしているか (例:主語・目的語など)を識別する上で、
その言葉がセンテンスの中で持つ「動詞との関係」を把握すると、 その品詞と動詞との位置関係や、動詞に対して果たす役割がつかめ てきます。

例えば、
J’apprends le francais.(私はフランス語を習っている/勉強してい る)
というセンテンスでは、軸になるのがapprends (アプロン)、つまり 「勉強する・習う・習得する」等を表す動詞apprendre の1 人称単 数現在です。

これを軸にすると、「私」を表すJe (上の文では次にくる動詞が母音 で始まるためJ’となります)はapprends の主語、 「フランス語」を表すlefrancais はapprends の目的語になってい る
・・・のように考えることができます。
(フランス語にまったく触れたことがない方は分からないかもしれ ませんが、現時点ではイメージだけでも掴んでいただければ大丈夫 です)
ここでは文法的に複雑な話に入ることは差し控えますが、「センテン スの中での動詞以外の言葉と動詞との関係を把握する」という思考 をする上で、非常に重要で念頭において頂きたいことをひとつだけ お話いたします。

それは、
フランス語では「名詞」(上の文のような冠詞+名詞のセットも含む) はセンテンスの中では動詞の目的語になることが多い

ということです。

このことは英語にもあてはまりますし、他のSVO 文型主体の言語に もあてはまります。
私たち日本人学習者は、日本語の名詞、特に漢字の名詞がセンテン スの中で強い存在であることに影響されてか、名詞に目が行きがち です。
これは、単語を覚える際にしても、センテンスや文章を理解したり 表現したりする上でも同様えす。
しかし、フランス語を学ぶときは、名詞が目に入ったら 「この名詞は、どういう動詞の目的語になるか」ということを意識 する ことをお勧めします。


つまり、動詞を主役と考えて、この名詞はどのような主役と相性が いいのか、ということご考えるわけです。
今までとはまったく違うアプローチ方法だといえますね。


■「動詞フォーカスメソッド」に基づいたフランス語学習方法とは?

次に、「動詞フォーカスメソッド」によって、効率よくフランス語を 身につけるための方法を提案させて頂きます。

まず、

極意その1

【動詞基軸で文法をしっかり身につけ、動詞優先で単語を覚える】
ということが重要です。
これは以下の2点に集約されます:
【1】
文法(いろいろな文法項目、学ぶことがら)を、
@全体(センテンス) → A中心(動詞) → B周辺(それ以外の部分)
の3つのカテゴリに分けて考える。
通常の入門書は@〜Bの事項をばらばらに扱っているので、通常の 入門書を使用する際は、目次や各章の見出し部分を、

これらのいずれにあてはまるか項目分けして、
@に関する項目→Aに関する項目→Bに関する項目の順番を意識し て学習することをお勧めします。
現時点でその項目分け作業が難しく感じるとしましたら、ひとまず は入門書の構成通りに学習を進め、ひととおり学習し終えてからそ れを行っても結構です。
ただ、初期段階からでも、ある文法項目が@ABのどれにあてはま るかについては意識するようにしてください。
たとえば、”avoir とetre”とか、「直説法半過去」などについてでし たら、それらはAにあてはまります。
また、un とかune, le とかla などの「冠詞」の話はBにあたります。
さらに、「疑問文」や「感嘆文」などについてでしたら、@にあては まることになります。


【2】

単語については、重要動詞の活用形を、やさしい会話表現や作文を 通して覚える

・・・このことは、これからのフランス語学習で常に意識して頂け ればと思います。
と言いましても、闇雲に覚えることは大変ですし、お勧めしません。
まず最初は、直説法現在と複合過去の活用形だけで結構です(日常 会話で出てくる動詞はこれらで8 割がたを占めるともいえます)。
なお、フランス語では、発音が同じでも人称によって綴りが違う場 合が多いので、どんなやさしい文であっても音読しながら書き取る か、音声を手で書き取る練習をしたほうがよいです。
(例:「住む」を表すhabiter の直説法現在は、j’habite, tuhabites, ilhabite, ilshabitent の4つの形のいずれも「アビットゥ」と発音さ れます。しかしtu(2人称単数)とils(3 人称複数)では綴りが違いま すよね)


極意その2

【SVO ベースの短めの文を「動詞から」組み立てる練習をする】

これは、動詞の語彙と活用を身につけ、フランス語らしい表現がで きるようになることが目的です。
まずは、旅行会話の決まり文句のような10 ワード以下の単文を、
(1)動詞、次に(2)主語(疑問詞を含みます)、その次に(3) 動詞との関連が強い言葉(副詞や、目的語など)といった順で「動 詞を起点に」組み立てる練習をしてみましょう。
例を挙げてみます。
(フランス語がまったく初めての方は、現時点ではイメージだけ掴 んでいただければ大丈夫です)

例1:「(その場所まで)歩くとどのくらい時間がかかりますか?」
Il faut combien de temps a pied ?
・・このセンテンスを、(combien, Il, pied, a, temps, faut, de)な どのように単語をばらばらに書き出してみてから以下のように組み 立ててみます:

(1)「動詞」はfaut (「〜しなければならない」を表す無人称構文の 動詞falloir の直説法現在3 人称単数)
(2)「主語」はここではIl (イル:英語のit にあたる)
(3)「動詞との関連が強い言葉」はまず「どのくらいの時間」を表す combien (ないしcombien de temps), そして「歩いて」を表すa pied
→主語が最初、動詞はその直後ということでIl faut で始める。
→「どのくらい(の時間)」を次にもってくる: combien de〜 の 言い方
→「歩いて」を表すa pied

例2:「荷物を預かってもらえますか?
Vous pouvez garder mes bagages ?
(1)「動詞」はpouvez (能力・可能を表すpouvoir の直説法2 人称 複数現在)及び
garder(英語のkeep に似た動詞、ここでは「保管する/預かる」を 表す)
※pouvoir+動詞の原形 という形です。
(2)「主語」はVous (「あなた」にあたる丁寧な2 人称→文法上は2 人称複数ですが、ここで指す相手は単数です)
(3)「動詞との関連が強い言葉」は動詞garder の目的語のmes bagages(私の荷物)
→主語Vous を最初に、動詞はpouvoir+garder の形を認識して pouvez garder の順にもってくる。
→目的語にあたるmes bagages をそのあとに続ける。


極意その3

【動詞を意識したリスニング、特にディクテーション】

まず、一般的に、リスニング能力向上のためにディクテーションは 非常に有効な方法です。
ディクテーションとは、ここでは「聞いた音声を書き取ること」を あらわしています。
フランス語学習においても、発音に関する規則(リエゾン・アンシ ャヌマン・エリズィオン等と呼ばれる発音規則があります)と「音 と文字の対応」を身につけるうえで、ディクテーションは必須とい えます。

例として、時刻に関する表現などは、初期のうちに「文字表記と音 とをしっかり対応させる」練習をすることをお勧めします。
Uneheure (1 時)→「ユナール」のように発音します。
また、Deuxheures et demie(2 時半)なども、「ドゥ・ザール・エ・ ドゥミ」というような発音を聞いたらすぐにこのように書きとれる ようになるのが目標です。

リエゾンなどの規則には、「フランス語の音の波に適合した発音をす るため」という目的があります。
仮にそれがなければフランス語らしさが失われるからです。
リスニング学習を通して発音・イントネーションを身につけるには、 英語同様のシャドーイングやリプロダクションがお勧めです。
シャドーイングとは、音声を聞きながら、その音声を0.5 秒くらい 遅れて追いかけるような形で自分も発音する練習です。
リプロダクションとは、音声化された文章を聞いた後、いったん音 声をストップします。
そしてその状態で、聞いた文章をそっくりそのまま自分で発音して みる練習です。こちらは、文章の塊をまるごと覚えていなければな らないので、シャドーイングよりも難しいといえます。
フランス語の習得にも、このシャドーイング・リプロダクションの 練習は必須です。


発音については、まずは
「音声をたくさん聞いて“それらしさ”を会得すること」
が大切です。

フランス語の「それらしさ」は、意外に思われるかもしれませんが、 日本語の東北地方の方言にも通じるものがあります。
正直に申しますと、フランス語は「カタカナ読み」でもかなりの割 合で通じますし、日本人がフランス語の発音を身につけることは、 実は英語や中国語よりも難しくないのです。


・・・そして最後に、

「動詞を意識したリスニング」
についてお話をさせていただきます。

フランス語では多くの場合にセンテンスの最初の方で動詞が使われ、 またセンテンスの中で高い頻度で動詞が使われます。
何度もお伝えさせていただきましたとおり、センテンスの中心をな すのは動詞であるため、フランス語のリスニングにおいても、 「動詞を聞きとる」ことが大切であるといえます。
他方、動詞を聞きとることに気がいきすぎてしまうと、センテンス の全体を聞き取れないことになります。
(以前、英語を指導させていただいた生徒さんからも同じような悩 みを伺いました。)
そこで、私としては、動詞ばかりに意識を向けるのではなく、あく までも「フルセンテンスを聞き取る」ことを目指して頂ければと思 います。
フルセンテンスを聞き取ったとすれば、その中に高い確率で動詞が 使われています。
「センテンス全体」に意識を向けた上で、その次に
「どういう動詞が使われていた、それはどういう音だった・・」
と思い起こしてください。

例として、
Ca fait trois ans que j’apprends le chinois.
(中国語を習って3年になります)
という音声が流れたとします。

このセンテンスをまず、”le chinois”まで聞き取ることが一番大切で す。

次に、「使われていた動詞」を思い起こしてください。
このセンテンスでは2つの動詞が使われていますが、あとのほう の”apprends”のほうが頭に浮かびやすいかと思います。
このセンテンスはいわゆる強調構文(英語でいうIt is ….that〜のよ うな構文)なので、この構文のことがわかっていれば、apprends の 前に”trois ans”(3 年)が聞こえたことでCa fait のfait (英語のdo と make を併せたような動詞faire の3 人称単数現在形)が使われている ことに頭が行くかと思います。
強調構文のことがまだわかっていないとするとこのセンテンスを完 全に聞き取ることは難しいかもしれません。
しかし、多少でも文法を学習した段階でしたら、最低でも「サ、な んとか・・トロワザン、ジャプロン・ル・シノワ」という音は聞き 取れると思います。

この「なんとか」は何だろう?動詞かな?・・・
などという「引っ掛かり」を持って頂ければと思います。
なお、スペイン語やイタリア語のように人称主語(私、あなた、彼 など)が省略されることはフランス語では少ないのですが、英語に 比べると弱勢で発音されたり、また”J’habite”(私は住む)のように動 詞の頭に母音やh(原則として発音されません)がくる場合は、主語 と動詞を1つの単語のように発音します。


おわりに

最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。
本書では「動詞」を中心とした学習方法についてお話をさせてい ただきました。
もしあなたが、フランス語の全くの未経験者であったり、文法用 語なんて久々に聞いた、という方でしたら、読み進めるだけでも パワーを消費したかもしれません。
しかし繰り返しお伝えさせていただいておりますように、センテン ス(文)の軸となるのは「動詞」です。
そのため、「動詞」さえわかれば文法の「中心」をつかむことがで きたといえます。
そして動詞以外の部分はセンテンスの中での動詞との関係を把 握することを心がけて下さい。


まず「中心」をおさえ、「中心と周辺との関係」も理解できればフ ランス語は楽しく学習することができます。
今の時点では、「動詞が重要なのか」くらいに、考え方がおおま かにでもつかめれば大丈夫です。
フランス語学習を進めていくうえで、ぜひ「動詞」だけには敏感に 反応するように、心がけていただければと思います。
本書の内容が少しでもあなたのフランス語学習の手助けになり ましたら、これほど嬉しいことはありません。
近いうちに、あなたにまたお目にかかれることを とても楽しみにしています。

網野智世子


お知らせ
さらにフランス語学習を深めたい方へ
本書の内容を基礎としてより発展させ、フランス語学習を本気で進めたい 方のためのフランス語教材が完成しました。
もちろん私、網野智世子が全文書き下ろし、ネイティブのフランス語音声 も付属した『網野式・動詞フォーカスフランス語入門』です。
フランス語初心者の方から中級者の方まで、じっくりと取り組んでいただ ける内容です。
パズルを解くように、フランス語を読解していくことができるようになりま す。

■詳しくはこちらのサイトに記載いたしました。
現在特別キャンペーン中ですので、今すぐこちらのサイトをご覧ください。
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『網野式・動詞フォーカスフランス語入門』
(このサイトでは私、網野智世子のフランス語・日本語の2ヶ国語スピーチ 動画もご覧いただけます)
網野智世子


【網野智世子プロフィール】
■上智大学法学部卒
■英検1級、TOEIC980点
■プロ翻訳業務言語
フランス語、英語、中国語、韓国語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語、ポルトガル語、 ロシア語(日本語を含め10ヶ国語の翻訳業務中)
■研究中言語
アラビア語、インドネシア語、マレー語、広東語、タイ語、フィリピノ語、ベトナム語、ヒ ンディー語、ペルシャ語、トルコ語、現代ギリシャ語、ポーランド語、ウクライナ語、チェ コ語、ハンガリー語、フィンランド語、ノルウェー語、スウェーデン語、デンマーク語、オ ランダ語
海外在住経験なくして独学で英検1 級・TOEIC980 点取得。
インド系IT 企業・日本法人の社内通訳・翻訳担当を経験。
30 歳を過ぎてから20 ヶ国語以上の多言語をマスターし、現在では約10 ヶ国語を使用 してプロ翻訳者・語学教材開発・編集業務などを行う。
4児の子育てに悪戦苦闘しつつ独自の語学習得法「動詞メソッド」を開発し、それを基 にした語学教材「網野式・動詞フォーカス中国語入門」、「網野式・動詞フォーカスフランス語入門」がヒット商品 となる。


網野式・動詞フォーカスフランス語入門【ネイティブ音声付き・メールサポート付き】〜本物のフランス語を身につけたい方へ〜

網野式・動詞フォーカスフランス語入門【ネイティブ音声付き・メールサポート付き】〜本物のフランス語を身につけたい方へ〜