「前門の虎、後門の狼」に直面した欧州の銀行が空中分解の危機にあります。欧州債務危機を乗り越えても、その先には国際決済銀行(BIS)の新規制「バーゼル3」が控えているのです。資産運用から預貸業務、投資銀行まですべての金融業務を手がけるユニバーサルバンク・モデルは、まさに崩壊寸前です。仏BNPパリバが計1兆ドル(約77兆6800億円)の資産売却に動くとの観測も真実味を帯びてきました。一方、海外で後れをとった邦銀には「漁夫の利」を得るチャンスが巡ってきたようです。
「資本・流動性基準を達成できない金融機関の情報公開を進め、各国の銀行監督当局がルールを確実に適用しているかを当委員会がチェックし、さらに監督当局間でも相互監視させる」
11月16日、米サンフランシスコの会合でBISバーゼル銀行監督委員会のステファン・イングベス委員長(スウェーデン中央銀行総裁)がバーゼル3の厳格な適用を高らかに宣言しました。
バーゼル3の規制は2013年から順次導入されますが、欧州銀の負担は大きいです。ユーロ圏主要28行は、財政危機にある欧州連合(EU)の「PIIGS諸国」(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)の国債だけでも2780億ユーロ(約28兆8400億円)を抱えるからです。
資金流出時に備え、15年から適用されるカバレッジ・レシオ基準では市場から30日間ほど資金を調達しなくても破綻しないだけの流動性資産の保有が求められます。しかし、ギリシャなどの国債は価値が急落していますから、「要求される基準の4分の1しか満たさず、5000億ユーロ分が足りない」(米金融大手のJPモルガン)との見方が大勢です。
バーゼル3では銀行の短期流動性資産の6割を現金や国債にすることを求められるのですが、過去2年間で10年物ドイツ国債に対するスペイン国債の利回り格差は4%、イタリア国債は約4.7%上昇しています。ユーロ危機は欧州銀の危機と同義です。
バーゼル銀行監督委の中央銀行総裁・銀行監督当局長官グループが、国際金融システム上の重要な銀行に自己資本の上乗せを求めたことも苦境を深めました。該当する欧州銀は増資を検討しましたが、金融市場の混乱のあおりで資産売却に動く可能性が高くなっています。仏ソシエテ・ジェネラルが欧州のブローカレッジ(委託売買業務)部門を、スイス金融大手のUBSが投資銀行部門の資産を売却するとの見方があるほどです。
欧州銀の混乱と資産売却の流れは、実は、邦銀にとっては国際金融の世界でめったに回ってこないチャンスです。実際、米ウォール街では、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)によるBNPパリバ傘下の米地銀、バンク・オブ・ザ・ウエストの買収がささやかれています。
時価会計導入や自己資本規制など1980年代から始まったバーゼルの銀行規制は、邦銀の勢いを確実にそいできました。しかし、08年秋のリーマン・ショック後に形勢は逆転し、MUFGが米モルガン・スタンレーに約9000億円の資本支援を実施しました。さらに財務戦略の保守化を求めるバーゼル3が、これまで海外で危険を冒さなかった邦銀が、打って出る環境を整えたともいえます。
「MUFGがモルスタ株を買い増すのではないか」
今年の安値圏である13ドル近辺まで下げた11月半ば、こんな噂が流れました。モルガン・スタンレー関係者は即座に否定しましたが、同社株の22%を保有するMUFGが、海外ビジネスの拡大を狙っているのは間違いないでしょう。
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